
3Dプリンタで点字が印刷でたら便利かなと思い調べてみたが手ごろな記事が見当たらなかったのでやってみました。
まず、点字の規格(ドットの間隔や高さ)を調べてみたが複数あり国によっても異なることが判りました。
今回は実験ということで、JIS T9253:2004(紫外線硬化樹脂インキ点字-品質及び試験方法)を参考に作ってみます。
※文章で書くと長くなりますが、一度覚えてしまえば簡単です。CADを使ってより正確なものを作ることも可能ますが、
手順が複雑だと普及しないので簡易な手順としました。
【事前準備】
※一度実行すれば次回から不要
①フォントを用意する
点字フォントも複数ありますが、フリーで使えるものを利用せていただきました。
以下サイトからフォントをダウンロードしてください。
②FreeCADにフォントを設定する
※既に、フォントファイルのフォルダーを指定済の場合は省略できます。
- CreeCADを起動する。
- ワークベンチでDraftに切り替える。
- メニューバーで「編集」→「設定」の順にクリック
- 左のアイコンから「Draft」をクリック、タブを「テキストと寸法線」に切り替える。
- デフォルトのシェイプストリング用フォントファイル」のテキストボックスの右にある…をクリック
- ①で保管したフォルダーにあるBNLbrail.TTF (点字線なし)を設定しOKをクリックする
③貼り付ける立体を用意する
FreeCADで貼り付ける立体の作成方法は省略しますが、張り付ける場所は文字あたり10mm×10mmのスペースが必要です。
【点字フォントを貼り付ける】
今回は、厚さ2mmの板に張り付けてみます。

①文字を設定する

- ワークベンチをDraftに切り替えます。
- Sのアイコン(テキスト文字列をシェイプとして作成)をクリック
- 文字列に印字したい文字を入力します。(今回はABCY)
- 高さを2mmにします。
※ここでいう高さとは、フォントの大きさを表します。後で設定することも出来ます。
- フォントがBNLbrail.TTF であることを確認しOKをクリックします。
- 画面上に点字が表示されたことを確認します。
※文字化けや通常の文字が表示された場合は、設定を確認してください。
②立体に貼り付ける
③貼り付ける位置を調整する

- コンボビューのShapeStringをクリックすると上記プロパティーが表示されます。
- XとYを調整して表示位置を合わせます。
※ここでは必要ありませんが、他のパラメータもこのプロパティーで設定できます。
④立体化する

- ③の状態で選択された押し出しをクリックすると、上記プロパティーが表示されます。
- 長さを0.40mmに設定します。
※ここでいう長さとは、点字の高さを表します。
⑤角を丸める

立体化しただけでは、表面がフラットな点字になってしまうので角を丸めます。
※本来なら楕円系を半分に切ったような断面にすべきですが、簡易な方法としてフィレットを使い、
出来上がりを検証してみます。
- 立体化された点の平面を選択する
※複数選択する場合は、CTRLキーを押したまま選択してください。
- 以下のようなダイヤログが表示されるので、半径を0.35にする

作業が完了すると以下ような立体ができあがります。

⑥STLファイルを出力する
ここからは、通常FreeCADから3D印刷する手順と変わりません。
- 出力したい立体を選択
- ファイル⇒エクスポート
- ファイルの種類をSTL Meshを選択
- 保存をクリックする
【3D印刷する】
光造形で印刷すれば、綺麗なものが出来上がりますが、手元にないので今回は「Sermoon V1 Pro」を使用します。
※当初クラハンでしたが、現在は通常購入できます。
スライスソフトは純正の「Creality Slicer 4.8.2」を使用します。パラメータは以下の通り
パラメータ |
印刷物A |
印刷物B |
印刷物C |
プロファイル |
0.2 |
0.12 |
0.12 |
インフィル |
10% |
10% |
10% |
サポート |
無し |
無し |
無し |
密着 |
無し |
無し |
無し |
印刷時間(表示された値) |
9分 |
15分 |
15分 |
フィラメント |
初期添付された素材 |
EN-PLA(白) |
※その他のパラメータはデフォルトのまま
結果は以下の通りです。
左から印刷物A、印刷物B、印刷物Cです。
合わせてアルファベット(ABCV)も印刷しました。写真では判りづらいですが、文字の細い部分は欠けています。

普段点字を読むことは無いので触った感じですが、印刷物Aは少し高さが不足して凹凸が不鮮明でした。
印刷物Bはハッキリとドットが判ります。印刷物Cは参考にしたビール缶と遜色ないです。(個人的感想)
ただし、どれもザラザラした手触りが有りますので立体化の時に0.1~0.2mm高く印刷し、
紙ヤスリで成形すると良いかもしれません。(実測すると半分の0.2~0.3しか有りませんでした。)
【サイズを測定してみる】
出来上がった印刷物Bと印刷物Cを規格と比較してみました。
|
JIS T9253:2004 |
FreeCAD |
印刷物B |
印刷物C |
ドットの間隔(上下) |
2.3±0.1 |
2.22 |
1.7 |
2.2 |
ドットの間隔(左右) |
2.3±0.1 |
2.47 |
2.0 |
2.3 |
フォントの間隔(左右) |
6.1±0.1 |
6.0 |
5.5 |
5.5 |
ドットの大きさ(外周) |
1.45±0.1 |
1.51 |
1.4 |
1.2 |
ドットの頂点の幅 |
規定なし |
0.86 |
不明 |
不明 |
ドットの高さ |
0.4±0.1 |
0.4 |
0.2 |
0.3 |
※赤字は規格外:実測は安いノギスを使っているため、0.1mm以下は不明です。

【まとめ】
FreeCADのデータとしては、かなり規格に近い値を示していますが、印刷結果は素材によって
結果が異なっています。だだし、ズレはコンマ数ミリのレベルなので、FDMプリンターとしては頑張った方だと思います。
残念ながら、FDMプリンターの初期設定では規格を満足することはできませんでしたが、素材を選び、
パラメータを調整することで、より正確にすることは可能だと思います。
この結果は、今後の制作物に生かしていきたいと思います。
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